日本のシャーマン「イタコ」が執り行う神事『オシラサマ』

不思議な話

現代日本に存在するシャーマン イタコ

シャーマンとは神々や自然界の精霊などと交信する力を持つとされる祈祷師であり、古代においては政治や社会に絶大なる影響力をもっており、邪馬台国の女王である卑弥呼もシャーマンだったのではないかという説もある。

そんな古代世界のファンタジー的な存在でもあるシャーマンは現代の日本にも『イタコ』として存在している。

『イタコ』は東北地方の巫(かんなぎ)という神の意志を人々に伝えるという人の一種であり、イタコという名称も巫女(みこ)がなまってできたものという説が有力である。

イタコとは主に盲目や弱視の女性が厳しい修行を積んでイタコになるというケースがほとんどであるあが、中には男性がイタコになることもあるようだ。

イタコが現代でも存在している理由は『口寄せ』を行うことにある。『口寄せ』とは死者の魂を自らの体に降ろし、生きている人に対して死者の言葉を伝えるという儀式である。しかしながらイタコの仕事は口寄せだけでなく、『神降ろし』によって神の言葉を伝えたり、安全祈願や厄除け、吉兆占いや人生相談を受け持ち、心理カウンセラーのような一面を持ちながら現代までにいたる。

一般人相手の口寄せは恐山大祭で行われる

現代に生きるシャーマンとして有名なイタコの口寄せだが、何時でも行われるということでもない。イタコが口寄せを行うのは年に数回程度であり、基本的には恐山で行われる。恐山は霊場として知られており、和歌山県の高野山、滋賀県と京都府にまたがる比叡山と並び、日本三大霊場に数えられている。

恐山で口寄せを行う理由としては、恐山が人の霊魂が死後に行きつく場といて信じられており、死者の魂を呼び寄せるのに最適な場所であると考えられているためである。

そして恐山でイタコの口寄せが最も見られるのが毎年7月20日~24日に行われる『恐山大祭』の期間中である。恐山大祭の期間中イタコは境内や小屋などで参拝客の依頼に沿った人物の魂を呼び寄せて言葉を伝え、残された人の悲しみや苦しみをいやしている。

イタコが執り行う神事『オシラサマ』とは?

現代のシャーマン『イタコ』については先に紹介しましたが、イタコは巫女でもあるため神事を執り行っています。このイタコが執り行う神事の中でも最も有名な神事が『オシラサマ』です。

オシラサマは農業と養蚕を司り、東北地方の中でも特に青森県と岩手県を中心に信仰を集めている神様で。主に村の旧家で祀られていることが多く、生活の中に根付いた神様がオシラサマです。

オシラサマの御神体は30cmほどの木の棒の先に男女や馬の顔が描かれていたり、彫られており、これにオセンダクと呼ばれる布の衣を着せたものです。


おしらさま

オセンダクは年に1回か2回新しい衣を上から重ねていくため、年数を重ねたオシラサマは上の写真のように着ぶくれしてしまいます。驚くことに現存する最も古いオシラサマは室町時代のものであるといわれています。

オシラサマは遊ぶことが大好きで、オシラサマはたくさん遊んでくれた家庭や地域に恩恵をもたらしてくれると信じられています。そのために行われるのが『オシラアソバセ』という神事で、このオシラアソバセにおいてイタコは非常に重要な役割を担います。

国の無形民俗文化財に指定されている神事『オシラアソバセ』とは?

オシラアソバセではイタコが2体のオシラサマの御神体を手に持ち、舞を躍らせながら祭文という唱え言を奏上します。

そしてこのオシラアソバセには破ってはいけない『禁忌』が数多く存在します。オシラサマは肉や卵を嫌うのでお供えはもちろん、人間が食べるのもはばかられ、オシラアソバセ当日は肉食厳禁となります。また、イタコが来ない家庭ではその家の主婦がこのオシラアソバセを行いますが、決して男性や他家の人間がしてはいけません。

これらの禁忌を破ったり、オシラサマを粗末に扱うと大変な罰や祟りに合ったという伝承も数多く残っています。生活に根付いた身近な神様であると同時に畏怖される存在でもあるオシラサマ。

かつてはどの家庭でもオシラアソバセが行われていたものの、現在ではオシラアソバセを行う家庭は徐々に減っているようです。青森県弘前市の久渡寺(くどじ)で毎年5月に行われるオシラアソバセは国の無形民俗文化財に指定されています。

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