今回ご紹介するのはオカルト研究室室長である私自身が体験した話です。私は趣味で山登りと写真撮影をしているのですが、山では何度か不思議な体験をしているのですが今回は最近体験した不思議な話をご紹介させていただきます。
2018年11月のことですが本格的な冬シーズンに突入する前に谷川岳の一ノ倉沢に夜明け前から登り、モルゲンロートと呼ばれる山が赤く染まる朝焼けを撮影しに行こうと、前日の夜から撮影仲間のMさんと車で出発し、目的の谷川岳ロープウェイ乗り場に午前3時に到着。通常時であれば谷川岳ロープウェイ乗り場から30分も歩けば目的の一ノ倉沢に到着するのですが11月とはいえ道中はすでに雪が10CMくらいは積もっていることと、撮影機材がかなりの重量であるため日の出の時間に余裕をもって到着出来うよう午前4時に出発することに。
外の気温は晴れているとはいえ-7℃。このような時期に山登りをしようとする人はやはり少なく、私たちがその日に一ノ倉沢に向かう最初の登山者になりました。一ノ倉沢への歩道は夜の間に降った雪が積もって前日の足跡を埋め尽くしているためスキー場でいう新雪状態。スキー場なら嬉しいものの登山では歩きにくく体力を消耗するためなかなか苦しいもの。しかしながら道を切り開いていくという達成感のような充実感もあり、道中は先頭を交代しながら目的の一ノ倉沢を目指し歩き続けました。
登り始めはほぼ真っ暗でヘッドライトの明かりだけが頼りでしたが徐々に明るくなりはじめヘッドライトがなくても大分先のほうが見えるようになってきたころ、前方から人影のようなものが見えてきました。歩き続けるにつれてその人影はどうやら数名であることと、登っているのではなく、下ってきているようだということがわかりました。
こんな時間に下ってくるってことは一ノ倉沢で夜を明かした人なのかな?この時期にそんなことをする珍しい人もいるんですねとMさんと話ながらも歩き続けて前方に見えた下ってくる人たちとの距離が近づくとそのパーティは3人組であり、みな下を向いてうつむいているように見ました。こんな寒い時期の深夜に野営して疲れているんだなくらいに考え、通常なら登山中はすれ違う時や追い越し・追い越されるときには「こんにちは」など基本的には挨拶をするのですが、うつむきながら歩く人には声をかけるのも相手に返事をさせることで負担になるのでそういった人には声をかけない方がいいと登山の先輩から教わっていたため、すれ違いざまには会釈のみにとどめて通りすぎました。「結構年季が入った服装でしたね」「さすがこの時期に野営をする熟練者だね」なんて感じの話をMさんとしながらも私たちは目的の一ノ倉沢に向かって歩き続けました。
それからしばらく歩くと目的の一ノ倉沢に到着し無事目的のモルゲンロートを撮影することに満足し一ノ倉沢を後にして下山することにしました。太陽が昇ってきたことでようやく他の登山者とすれ違い始めました。
下山中も私たちが登るときに踏み固めてきた所を歩いて帰り、これから登る人もその踏み固めたところを歩いてきているため新雪状態の道には歩いた後は一直線。私たちがすれ違う時にどちらかが横にそれて行き交いをしていましたが、ここで奇妙なことに気が付きました。私たちが一ノ倉沢に向かった時にすれ違ったパーティの足跡はどこに?
私たちが登るときは常に新雪状態で歩くときには先頭が歩いて踏み固められた雪のところを後ろにいる人が歩いて体力の消耗を防ぎ、2人パーティなので交互に先頭を切り替えて登っていたのですが、そうなれば私たちが登ってくるときにすれ違ったパーティの足跡や歩いた形跡がないのはあり得ないこと。かなりの雪がっていれば足跡が消えてしまうこともあるかもしれませんが、その日はモルゲンロートが綺麗に見えるくらいの快晴で、なおかつ私たちが一ノ倉沢に滞在していたのはせいぜい90分程度。風で雪が動いて足跡を完全に消すとも考えられません。
私はMさんに「登ってるときにすれ違ったパーティの人たちは私たちの右側を歩いてましたよね。足跡って・・・」と話かけると、Mさんは私の言葉を遮るように「今はとりあえず下山を急ごうか」と言い、私もそれに賛成しそのあとは無言で下りの雪道を少し速足で下りました。
オカルト研究室室長の考察
一ノ倉沢から谷川岳ロープウェイ乗り場まで私たちが下山中に登ってくる登山者とすれ違うところ以外は私たちが登りで踏み固めた後が一本のみ。二人そろって幻覚を見るなんてことは考えられませんし私たちが一ノ倉沢へ向かう途中にすれ違ったパーティは幽霊のような存在だったのでしょうか。
谷川岳は日本百名山の一つでロープウェイが整備されており、都心からのアクセスも良好で大勢の観光客が訪れる観光地でもありますが、その一方で統計がとられ始めた1961年から遭難による死者は700人を超える魔の山としても知られています。ひとつの山での死者の数としては世界一でギネスブックにも掲載されているほど。私たちが一ノ倉沢へ向かう途中にすれ違ったパーティは谷川岳で命を落としてしまった登山者のさまよえる魂だったのかもしれません。
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