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愛知の心霊スポット・旧伊勢神トンネル

愛知の心霊スポット・旧伊勢神トンネル|「着物の女」と噂の真相

愛知県豊田市の伊勢神峠に、明治30年(1897年)に掘られた石造りのトンネルがある。国の登録有形文化財でありながら、東海地方でも有数の心霊スポットとして語られてきた旧伊勢神トンネル(伊世賀美隧道)だ。着物姿の女性、すすり泣き、少年や母子の霊、エンジンの停止。語られる怪異は多いが、その一方で、市の文化財担当の調べでは事故や災害による死者の記録は確認されていない、という話もある。歴史的な事実と噂を分けながら、このトンネルの二つの顔を整理してみたい。

明治30年に掘られた、花崗岩の石造トンネル

国指定文化財等データベースによると、旧伊勢神トンネルは明治30年の竣工で、延長は308メートル、幅員は約3メートル。2000年(平成12年)9月26日に登録有形文化財(建造物)となり、所有者は豊田市である。坑口は馬蹄形で、全体が花崗岩の石造り。当初はレンガ造りの予定だったが、地質や湧水の問題から石造りに変更されたと解説されている。峠はもともと石神峠などと呼ばれていたが、1864年に伊勢神宮の遙拝所が築かれてから、伊勢拝峠と呼ばれるようになったとされる。名称の由来には諸説あり、はっきりしない部分もある。なお、設計者や施工者については、公的な資料でも名前は確認できていない。

新しいトンネルが次々にできた峠

この峠の道は、時代とともに付け替えられてきた。1960年(昭和35年)には、延長1,245メートルの新しいトンネル(2代目)ができ、明治の石造トンネルは旧道になった。さらに現在、国道153号の伊勢神改良として、延長1,901メートルの新トンネルが整備されている。国土交通省の事業ページや報道によると、2026年3月に貫通したが、開通日は今のところ未定である。そのため、旧トンネルが今後どう扱われるかも分からない。

語られている怪異

怪異は、心霊マップやまとめ記事、体験談サイトなどで語られているものが中心である。もっともよく知られるのは、着物姿の女性の話だ。トンネル内に立っている、すすり泣きが聞こえる、夜に電話が鳴り、出ると女性のうめき声がした、という内容である。ヒッチハイクの女性を乗せると、出口の手前で消えてしまい、座席が濡れていたという体験談も投稿されている。子供の話も多く、少年の霊が出る、「お兄ちゃん」と呼ぶ声がする、母子の霊がいるので通過中にクラクションを鳴らすと悪いことが起きる、といったものがある。そのほか、トンネルの真ん中でエンジンが止まる、ヘッドライトが消える、寒気やめまいがする、という話も見られる。

新トンネルの噂が混ざっている可能性

ここで注意したいのは、新旧のトンネルの噂が混ざりやすいことだ。雨具を着た作業員の男が立っていて、通り過ぎるとバックミラーから消える、という話は新しい方のトンネルについて語られることが多い。和服姿で手を振る女性を乗せると消える、という話も同様である。それが、旧トンネルの話として紹介されている例もある。どの話がどちらのトンネルのものか、はっきり区別できない点は、頭に置いておきたい。

「死者の記録はない」という調べ

では、こうした怪異の元になる出来事はあったのか。トンネルに関する解説では、「工事中に作業員が亡くなった」「人柱が埋められた」という話がよく語られる。しかしWikipediaは、豊田市文化財課の調べでは、トンネル内やその付近で事故や災害による死者の記録は確認されていない、と記している。出典として挙げられているのは、中日新聞の2023年11月の記事である。ただし、この新聞記事の本文そのものは確認できていないため、ここでは伝聞として紹介する。また、「記録が確認されていない」ことは、「誰も亡くならなかった」ことを意味しない。そこは慎重に受け止めたい。

伊勢湾台風の犠牲者説

噂の中には、1959年の伊勢湾台風の犠牲者の霊だとする話もある。しかし、旧トンネルの竣工は明治30年で、台風より60年以上も前だ。そのため、この説が当てはまるとすれば、1960年に開通した方のトンネルについてだろう。ただ、それを裏づける史料は見つかっていない。心霊スポットの投稿欄には、「山奥なので台風被害とは関係ない」という趣旨の反論も書き込まれている。

いつから「有名」になったのか

最古の記述として確認できたのは、2006年4月付の個人の訪問記である。そこにはすでに、全国的に有名な心霊スポットと書かれていた。筆者は20回以上訪れたが、何にも遭遇しなかったという。2013年にはマイナビニュースが、霊能者がテレビで「工事中に亡くなった人がいる」と語ったと伝えられる話を紹介している。ただし、番組名や放送年は確認できなかった。噂がいつ生まれたのかは、はっきりしない。

オカルト研究室室長の考察

旧伊勢神トンネルの面白さは、明治の石造トンネルという確かな歴史と、出典の分からない怪異とが、同じ場所に重なっている点にあると思う。確認できる史実は、石を積み、峠を越える人のために道を通した、という事実だけだ。そこに、暗くて狭く、昼でもひんやりした空間が、人の想像を呼び込んだのだろう。今も豊田市が所有する文化財であり、すれ違いのできない細い道でもある。肝試しとして夜に押しかけるのではなく、文化財としての姿に目を向けてほしい。

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