UAPファイル第7弾の「黒い三角形」

UAPファイル第7弾の「黒い三角形」|時速2,900kmは本当か、公開文書から検証

2026年10月23日、アメリカ国防総省(戦争省)が、UFOやUAP(未確認異常現象)に関する第7弾の機密解除ファイルを公開した。UAPファイルの公開は5月に始まったもので、今回の目玉は、連邦の捜査官が目撃したとされる「黒い三角形」の報告書だ。「時速2,900キロで飛び去った」といった刺激的な見出しも出回っているが、公開された文書を整理すると、見えてくるのはもう少し地味で、そして興味深い実像である。確認できる事実と、拡散している話を分けてみたい。

第7弾は何が公開されたのか

この公開は、国防総省が進める情報公開の枠組み「PURSUE」の一環で、専用サイト「war.gov/UFO」で行われている。第1弾は5月8日。その後、5月22日、6月12日、7月10日、8月7日、9月18日と続き、今回が7回目にあたる。間隔は最初の2週間から、3週、4週、4週、6週、5週と、少しずつ空くようになった。第7弾の件数は、28件のPDFとする報道が多い。ただし、10件とする報道もあり、食い違いがある。いずれにせよ、動画や音声、独立した画像ファイルは含まれておらず、文書が中心だとされる。国防総省の広報は、近く次の公開も準備していると述べたと報じられている。

「黒い三角形」の報告書

今回もっとも注目されたのが、2026年6月に米国西部の国家安全保障上の施設で起きたとされる目撃だ。正確な日付と場所は黒塗りになっている。CBSニュースの要約によると、目撃したのは連邦の特別捜査官らで、氏名は公開されていない。AAROのメモと、FBIの供述書がそろっている。日没後、尾根の数マイル西に、三角形の物体が見えた。大きさは翼幅で9〜15フィートほど、色は暗い黒で、光を反射しなかったという。物体は垂直に200〜300フィート上昇し、20秒ほど空中に留まったあと、戦闘機に匹敵する速さで水平に飛び去った。その間、音はまったくしなかったとされる。翌朝の現地調査では、残骸も地面の痕跡も植物の損傷も見つからなかった。

映像や写真はない

注意したいのは、物体そのものを写した写真や映像が公開されていないことだ。公表されたのは、尾根の写真に黒い図形を重ねた再現図で、レーダー記録や熱画像、施設のカメラ映像も含まれていない。つまり、これは証言だけの事案である。

「時速1,800マイル」はどこから来たのか

見出しで目にする「時速約1,800マイル(約2,900キロ)」は、公式文書の数字ではない。目撃者が「約1.5マイルを約3秒で移動した」と述べたものを、メディアが換算したにすぎない。しかも、日暮れ時に肉眼で見た目測であり、距離の見積もりが半分なら速度も半分になる。IBTimesは、AAROのメモとFBIの供述書で、物体が見えていた時間などの記述に差があると指摘している。3秒という数字と、30秒を超えるという記述が並んでいるのだ。機器で測った速度のデータは、公開された範囲には見当たらない。

AAROは何を結論づけたのか

AAROは、この事案が何だったのかの結論は出していない。形態や動きが米国西部の他の報告とよく一致するとして、さらなる調査に値すると述べている。なお、公開ファイルにつく「未解決」という分類は、情報が足りず確定できないという意味で、地球外起源を示すものではないと、当局は説明してきたと報じられている。FBIの供述書には「デルタ翼のドローンに最も似ている」という趣旨の表現があるが、AAROが正体を特定したわけではない。ハーバード大学のアビ・ローブ氏は、NewsNationの番組で「何なのかは分からない」と述べ、より良いセンサーが必要だと語った。自身の文章では、今回のような公開データでは同定は難しいとも書いている。

ほかに収録された資料

第7弾には、黒い三角形以外の資料も含まれている。1953年のスウェーデンや1957年のサウジアラビアでの目撃報告、民間企業が国防総省向けに作成した月次報告、1963年のNASAの省庁間ガイダンスなどだ。ユタ州のスキンウォーカー牧場に関する2010年の報告も入っており、毛髪サンプルはアライグマとイヌのものだったと報じられている。超常的な活動を裏づける確かな証拠は、含まれていないという。

オカルト研究室室長の考察

第1弾のときも、懐疑派の研究者や元AARO所長らから、「新味に乏しい」「文脈がないと憶測を呼ぶだけだ」という趣旨の批判が出たと報じられた。今回も、物的証拠のない証言が中心という点は変わらない。それでも、AAROの聞き取りとFBIの署名入り供述がそろう事案が公開されたのは、これまでと違う点だと思う。一方で、公開のたびに「政府がついに認めた」という見出しが先に走ってしまう。この記事を書いている時点で、黒い三角形の正体は誰にも分かっていない。分からないものを、分からないまま眺める。それが、この種のファイルとの付き合い方なのかもしれない。

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