
ロズウェル事件の真相|「円盤回収」から「モーグ計画」へ、変わり続けた政府の公式説明
1947年7月、アメリカ・ニューメキシコ州の陸軍飛行場が「空飛ぶ円盤を回収した」と発表し、その翌日には「気象観測気球だった」と訂正した。ロズウェル事件は、UFOと政府の隠蔽をめぐる陰謀論の原点として、今も語られ続けている。ただ、この事件の面白さは宇宙人の有無よりも、政府の「公式説明」そのものが何度も変わってきた点にある。1947年から1990年代までの説明の変遷を、確認できる事実と諸説に分けて整理してみたい。
1947年7月、「円盤回収」の発表と、翌日の訂正
発端は、牧場主のW.W.「マック」・ブレーゼルが、1947年6月中旬ごろに牧場で見つけた奇妙な破片だとされる。その後、保安官を経て、ロズウェル陸軍飛行場の情報将校ジェシー・マーセル少佐のもとに話が渡った。7月8日付の地元紙『ロズウェル・デイリー・レコード』は、「ロズウェル近郊の牧場で陸軍飛行場が空飛ぶ円盤を捕獲」という見出しを掲げ、基地の情報部が正午に発表したと伝えた。ところが同じ日のうちに、第8空軍のロジャー・ラミー准将が、回収物は気象観測用のターゲットだと説明した。翌9日付の別の新聞は、「円盤はまがい物、気象観測装置と判明」と報じている。ブレーゼルの発見日や基地に届けた日、発表者の描き方は、資料によって食い違いがあるため、細部は断定しない。
30年後に再燃した事件
その後、事件は長く忘れられていた。注目が再び集まったのは1978年のことだ。研究者のスタントン・フリードマンがマーセル少佐に取材し、少佐は気象観測気球の説明は「カバーストーリー」だったと語ったとされる。1980年には書籍『ロズウェル事件』が出版され、事件は一気に有名になった。空軍の報告書は、「遺体」の話が事件の一部として語られるようになったのは、1978年以降だと述べている。
1994年の空軍報告書とモーグ計画
1990年代、事件への関心が再び高まるなかで、空軍は調査を行った。1994年7月付の報告書は、回収された残骸は、気象観測気球ではなく、「モーグ計画」の気球装置だったと結論づけた。モーグ計画とは、冷戦期に、ソ連の核実験を探知するため、高高度に気球でマイクを飛ばそうとした最高機密の計画だ。報告書は、気球を飛ばした技術者たちですら計画名を知らされていなかったと説明している。つまり1947年の「気象観測気球」という説明は、正確ではなかったものの、機密を守るための説明だった、というのが空軍側の整理になる。ただし、モーグ説を空軍が後から当てはめた説明だとして批判する研究者もいる。
「遺体」の目撃談はダミー人形だった?
では、「宇宙人の遺体を見た」という証言はどう説明されたのか。1997年の追加報告書「Case Closed」は、目撃談の背景として、空軍が1950年代に高高度気球や航空機から落下させた人体模型(ダミー人形)の試験や、1956年と1959年の航空事故の記憶が混ざった可能性を挙げた。報告書自身が、数年にわたる出来事が「1947年7月の2、3日」に圧縮された、と指摘している点が興味深い。1947年と1950年代には、10年近い時間差があるからだ。
「記録が破棄された」という指摘
一方で、疑いを残す材料もある。米会計検査院(GAO)が1995年にまとめた報告書によると、ロズウェル陸軍飛行場の管理文書(1945年3月〜1949年12月)や、発信電文(1946年10月〜1949年12月)が破棄されていた。処分の記録には、誰が、いつ、どのような権限で破棄したかが書かれていなかったという。ただしGAOは、違法な破棄だったとは断定しておらず、当時の記録管理規則自体が不明確か、変更の途中だったとも指摘している。「出所の分からない破棄が確認できる」という書き方が、いちばん正確だろう。
証言の強さと、エリア51との関係
宇宙人説を支える証言には、慎重な見方もある。たとえば、元葬儀屋のグレン・デニスは、基地から遺体の保存について問い合わせがあったと語ったとされる。ところが、話に出てきた看護師の名前は、後に偽名だったと本人が認めたと伝えられる。ほかの証言者にも、軍歴や記録との食い違いが指摘されている。証言は貴重な記録だが、時期のずれや記憶の混同を考える必要がある。なお、ロズウェルとエリア51はよく混同されるが、別の話だ。エリア51の存在を米政府(CIA)が公式に認めたのは、2013年8月に公開された文書でのことである。
オカルト研究室室長の考察
ロズウェル事件が語り継がれる理由は、宇宙人の証拠があるからではなく、「公式説明が何度も変わった」という事実そのものにあるのだろう。冷戦下の機密という壁があったために、政府は本当のことを言えなかった。その結果、説明は気球、モーグ、ダミー人形と姿を変え、人々の疑念を深めてしまった。いまのロズウェルは、毎年7月にUFOのイベントが開かれる町でもある。謎が地域の文化になったという点も含めて、この事件は、隠された真実よりも、隠そうとした側の事情を映している。
都市伝説や妖怪、心霊現象、未確認生物、歴史に残る不可思議な出来事を探究するオカルト愛好家。噂をそのまま紹介するだけでなく、伝承が生まれた背景や史実、科学的な説などを調べ、さまざまな角度から考察しています。信じる・信じないだけでは終わらない、オカルトの奥深さと面白さをお届けします。









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