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マンデラ効果とは ― 集団の記憶が一致して不一致な謎、パラレルワールド説の真相

「たしかにこうだったはず」——多くの人が同じように記憶しているはずの出来事が、なぜか事実とは異なっている。しかも、それを間違って覚えているのが自分一人ではなく、見ず知らずの大勢の人々と共有しているとしたら。そんな不思議な集団的記憶違いは「マンデラ効果」と呼ばれ、世界中で語られている。今回はこの現象の正体を探ってみたい。

きっかけは、ネルソン・マンデラの「獄中死」という誤った記憶

この言葉が生まれたのは2009年、アメリカのサブカルチャーイベント「ドラゴン・コン」でのことだった。超常現象研究家フィオナ・ブルームは、そこで出会った複数の人々が「南アフリカの反アパルトヘイト運動家ネルソン・マンデラは、1980年代に獄中で死亡した」と記憶していることに気づく。しかし実際のマンデラは1990年に釈放され、1994年から1999年まで大統領を務め、亡くなったのは2013年のことだった。ブルームは翌2010年、この現象を紹介するウェブサイト「The Mandela Effect」を開設し、「マンデラ効果」という言葉が広まっていくことになる。

世界で語られる代表的な事例

以来、同様の「集団的な記憶違い」が世界各地から報告されるようになった。映画『羊たちの沈黙』のレクター博士が言ったとされる「ハロー、クラリス」という台詞、『白雪姫』の魔女の台詞「鏡よ鏡、鏡さん」、児童書シリーズ「Berenstain Bears」を多くの人が「Berenstein Bears」と綴りを記憶していた件、そしてポケモンのピカチュウの尻尾の先が黒かったという記憶——これらはいずれも、実際の記録とは異なる「集団の思い込み」として知られている。

日本でも起きている”集団の記憶違い”

日本にも独自のマンデラ効果とされる事例が数多く存在する。ピカチュウの尻尾は先まで黄色一色なのに、なぜか黒いと記憶している人が多い件。ドラえもんの主題歌の歌い出しを「あんなこと」だと記憶している人が多いが、正しくは「こんなこと」から始まる件。東京の「大田区」を「太田区」と誤って覚えている人が多い件(群馬県の太田市との混同が指摘されている)。そして2011年のアジアカップ決勝、李忠成選手のゴールを「勝ち越し点」だと記憶している人が多いが、実際には延長戦での先制点だった件など、枚挙にいとまがない。

心理学が示す「もっともらしい」説明

こうした現象について、認知科学者たちは超常現象に頼らない説明を試みている。似たような記憶同士が干渉し合う「誤情報効果」、記憶を再構築する際に無意識のうちに辻褄を合わせてしまう「作話」、そして周囲の意見に同調してしまう社会的圧力などが、集団的な記憶違いを生み出す要因として挙げられている。マンデラの「獄中死」の記憶についても、同じく反アパルトヘイト運動家で実際に獄中死したスティーヴ・ビコとの記憶の混同が一因ではないかと指摘されている。

それでも消えない「パラレルワールド」説

もっとも、こうした科学的な説明よりも、インターネット上では「知らないうちに、少しだけ異なるパラレルワールドへ迷い込んでしまったのではないか」という説の方が根強い人気を誇っている。言葉の生みの親であるブルーム自身は、これはあくまでSFファンが不思議な現象を楽しむための概念であり、真剣な陰謀論として語られるべきものではないと明言しているのだが。

オカルト研究室室長の考察

自分の記憶が絶対に正しいと言い切れる人は、実はそう多くないのかもしれない。それでも、赤の他人と同じ間違いを共有しているという事実には、単なる勘違いでは片付けられない不気味さがある。次にふと「あれ、こうだったはずなのに」と感じたときは、もしかすると、少しだけ違う世界線からこちらに迷い込んできた記憶なのかもしれない。

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