
HAARP地震兵器説の真相 ― 国会でも語られた陰謀論を検証する
大きな地震や異常気象が起きるたびに、インターネット上で必ずと言っていいほど名前が挙がる施設がある。アラスカにある「HAARP(高周波活性オーロラ調査プログラム)」だ。「地震兵器」「気象兵器」として、自然災害を人為的に引き起こしているのではないか——そんな疑惑は、日本の国会でも取り上げられたことがある。今回はこのHAARPをめぐる陰謀論について検証してみたい。
HAARPとは何か ― 電離層を研究するアメリカの施設
HAARPは、アラスカ州の国立公園内に建設された、地球の電離層や宇宙環境を研究するための施設である。1980年代末に建設が始まり、2005年頃、総額2億9000万ドルをかけて完成した。運営にはアメリカ空軍・海軍、国防高等研究計画局(DARPA)とアラスカ大学が関わり、スタンフォード大学をはじめとする14以上の米国内大学に加え、日本の東京大学も観測機器を提供している。その目的は、電離層を通過する無線通信の効率化や、地下にある物体を探知する技術の研究にあるとされている。
「地震兵器」説はなぜ生まれたのか
この施設をめぐっては、以前から「強力な電磁波を使って気象や地震そのものを操作しているのではないか」という陰謀論が根強く語られてきた。2004年のスマトラ沖地震、1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、さらに海外でも2015年のネパール大地震や2023年のトルコ地震など、大きな地震が起きるたびに、HAARPの関与を疑う声がインターネット上に広がっている。
日本の国会でも取り上げられた
興味深いことに、この話題は日本の国会でも取り上げられたことがある。2011年7月11日、衆議院の東日本大震災復興特別委員会において、当時みんなの党の議員が「スマトラ沖地震に隠された仰天情報」と題する資料を配布し、アメリカが気象コントロール技術によってスマトラ沖地震を引き起こした疑いがあると質疑した。これに対し当時の政務官は、「地震兵器や自然改変装置は、アメリカだけでなくロシアや中国でも研究されている」「地震や津波を人工的に起こすことは、技術的には十分可能と言われている」と答弁している。
熊本地震後に相次いだ落書き事件
2016年の熊本地震後には、この陰謀論に影響されたとみられる事件も起きている。熊本県八代市の47歳の会社員が、益城町で倒壊した住宅に「売国皇室によるテロ地震」と落書きしたところを現行犯逮捕され、その数日後には八代市役所にも「HAARPで全壊も少しだったネー」といった趣旨の落書きをして再逮捕された。県内では他にも同様の落書きが複数発見されている。
科学的に見た「不可能」な理由
もっとも、専門家の見解は一貫している。HAARPが発する電磁波の出力は、気象現象に影響を与えるにはあまりに小さく、ましてやプレート同士がぶつかり合うエネルギーで発生する地震を人為的に起こせるだけの力は持ち得ない。日本で地震や台風が頻発するのは、複数のプレートが重なり合う場所に位置していることや、太平洋の暖かい海水から台風が発生しやすいことなど、何千年も前から続く自然のメカニズムによるものである。
オカルト研究室室長の考察
大規模な災害という、あまりに理不尽で受け入れがたい出来事に直面したとき、人はどこかに「原因」や「黒幕」を求めたくなるのかもしれない。HAARPをめぐる陰謀論が国境を越えて、時に国会という公的な場でまで語られてきたのは、その心理の根深さを物語っているように思う。





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