
新型コロナ『プランデミック』論を検証する ― 意図的発生説の真相
2020年以降、世界中に感染が広がった新型コロナウイルス。その混乱のさなか、「このパンデミックは自然発生ではなく、何者かによって意図的に引き起こされたものだ」とする、いわゆる「プランデミック(plan+pandemic)」論がインターネット上で急速に広まった。今回はこの陰謀論の内容と、科学的に何が分かっているのかを検証してみたい。
飛び交った「アメリカ起源説」と「中国生物兵器説」
パンデミックの初期、真っ先に広まったのが、アメリカと中国がそれぞれ相手を名指しする形の起源説だった。中国側からは「新型コロナを武漢に持ち込んだのはアメリカ軍かもしれない」という主張が公式な場でも語られ、一方で「中国の研究所がSARSウイルスとHIVウイルスを人工的に組み合わせて生物兵器を作った」とする説も広く拡散した。しかし後者の根拠とされたインドの研究チームによる論文は、専門家の検証によって「挿入されたとされる遺伝子配列は極めて短く、多くのウイルスに共通して見られるものにすぎない」「自然な変異の範囲内であり、人為的に操作された痕跡は見られない」として、完全に否定されている。
発信源はいずれも著名な陰謀論サイトだった
これら二つの説の出どころを追跡した調査によれば、「アメリカ起源説」はロシアのプロパガンダ拡散との関連が指摘されるカナダのウェブサイトから、「中国生物兵器説」は金融系の陰謀論サイトや、極右のラジオパーソナリティが運営するメディアから、それぞれ発信されたことが分かっている。国家間の対立という現実の緊張関係を背景に、根拠の薄い主張がまたたく間に世界中へ拡散していった構図だ。
科学的に見えてきた「自然起源説」の裏付け
一方で、ウイルス自体を科学的に分析した研究では、新型コロナウイルスはコウモリ由来とされる近縁のウイルスと遺伝子配列が96パーセント程度一致しており、そのスパイクタンパク質の構造も、自然の進化の過程で十分に生じうる範囲のものだと報告されている。過去のSARSやMERSも動物由来の感染症として発生した経緯があり、これらの知見から、新型コロナウイルスも人為的に作られたものではなく、自然界で発生したとする見方が科学界では主流となっている。
「研究所起源説」と「意図的な生物兵器説」は別の話
もっとも、ウイルスの起源をめぐる議論が完全に決着しているわけではない。アメリカのエネルギー省は2023年、確度は低いとしながらも「研究所からの流出である可能性がある」との見解を示しており、一部の情報機関はこの説を依然として検討しているとされる。ただしここで重要なのは、これはあくまで「研究目的で扱っていたウイルスが事故で流出した可能性」を指すものであり、「意図的に兵器として作られ、人為的にばらまかれた」とする陰謀論とは、まったく別の話だという点だ。決定的な証拠がない以上、断定はできないものの、少なくとも「意図的な散布」を裏付ける科学的・情報機関的な根拠は、現時点で確認されていない。
オカルト研究室室長の考察
未知の感染症が世界中を混乱させたとき、その原因を「誰かの意図」に求めたくなる心理は、決して理解できないものではない。しかし今回のケースでは、最も過激な主張の出どころをたどると、対立する国家や特定の思想的立場を持つメディアに行き着くことが多かった。不確かな情報が国境を越えて増幅されていく様子は、パンデミックそのものと同じくらい、現代という時代の特徴を映し出しているのかもしれない。







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