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チュパカブラ

チュパカブラとは?|1995年プエルトリコの家畜怪死から世界へ広まった経緯

家畜の血を吸うとされる怪物、チュパカブラ。スペイン語で「ヤギを吸うもの」を意味するこの名前は、1990年代半ばのプエルトリコから世界中に広まった。二足で立つ人型の怪物として語られた一方で、後には犬のような姿の死骸が各地で「チュパカブラ」として報じられている。同じ名前のまま、姿がまったく違う二つの怪物。その正体をめぐる検証の歩みを、確認できる事実と諸説に分けて整理してみたい。

1995年、プエルトリコで始まった家畜の怪死

報道によると、1995年3月ごろ、プエルトリコで血が抜かれたとされるヤギの死骸が見つかり始めた。傷は小さく整っていて、血がほとんど見られなかったと伝えられる。「ヤギを吸うもの」を意味する名前は、ラジオに出演していた人物が最初に付けたと一般に信じられているが、別の人物の名前や以前の用例も指摘されており、命名者は断定できない。名前が先に広まり、怪物の姿が後から付いてきた、とも言える経緯である。

8月の目撃と、スケッチに描かれた姿

怪物の姿が初めて広く知られたのは、1995年8月のことだ。目撃者のマデリン・トレンティーノが、プエルトリコの自宅近くの庭で見たという怪物のスケッチが、現地の新聞に掲載された。身長は1.2〜1.5メートルほどで二足歩行し、背中にトゲが並び、手足は細長く、頭部は楕円形で、赤か黒の目をしていたとされる。ここで語られた姿は、後に世界中でイメージされる「チュパカブラ」の原型となった。

映画『スピーシーズ』との類似という指摘

この姿について、懐疑派の研究者ベンジャミン・ラドフォード氏は、1995年公開の映画『スピーシーズ』に登場するエイリアンに似ていると指摘している。トレンティーノが目撃を報告する前に映画を見ていたことが根拠で、同氏は、チュパカブラは映画の記憶が目撃体験に混ざったものだと結論づけた。映画が現地で公開されたのは目撃の数週間前で、家畜の被害が始まった3月ごろより後だとされる。つまり家畜の怪死は映画より前に始まっており、映画由来説が説明できるのは「怪物の姿」の部分に限られる、という整理になる。なお、プエルトリコでの正確な公開日は今回の調査では確認できなかった。ここで注意したいのは、これが目撃者を嘘つきと断じる説ではないことだ。記憶の混同が起こりうる、という趣旨の指摘であり、本稿でもそのように受け止めたい。

各地へ広がった「チュパカブラ」

その後、チュパカブラは中南米から米国へ広がった。1996年ごろには米本土のマイアミで最初の目撃があったとされ、2000年にはニカラグアで、家畜を襲っていた動物が撃たれ、死骸は疥癬にかかったイヌと判断されたという。メキシコやブラジル、チリ、スペインなどでも目撃が報じられたというが、年代は確認できていない。

DNA検査が示した「もう一つの正体」

2000年代に入ると、テキサス州で「チュパカブラ」とされる死骸が相次いで見つかった。2007年7月には牧場の外で4日間に3体が見つかり、体重はそれぞれ約18キロ、毛がなく犬のような外見だったとされる。テキサス州立大学サンマルコス校の研究者らがミトコンドリアDNAを解析したところ、コヨーテとほぼ同一だと結論づけられた。毛が抜けた原因は未解明とされたが、2004年や2009年に中部テキサスで見つかった死骸も、DNA検査では疥癬にかかったコヨーテか犬と判定されている。重い疥癬にかかると毛が抜けて皮膚が硬くなり、骨ばった姿になる。これが、四足歩行で青灰色の皮膚をしたテキサス型チュパカブラの正体とされる。

血は本当に抜かれていたのか

被害動物の死骸についても検証が行われている。報告された約300頭の被害動物を獣医が分析したが、血は抜かれていなかったとされ、ラドフォード氏も、被害を受けた動物の血液量は正常だったと述べている。ただし、獣医の氏名や調査主体は今回の調査では確認できなかった。傷が整っていて血が少なかった点は、死後に鳥や虫が処理した結果であり、血圧がなければ血が噴き出さない、という説明もある。

宇宙人説、政府の秘密実験説

怪物の由来をめぐっては、宇宙人が連れてきた生物だという説や、米国政府の秘密の遺伝子実験から逃げ出したという説も語られた。これらを支持する確かな証拠は示されていない。ラドフォード氏は、プエルトリコでの政府への不信感が、政府の失敗作という説に結びついたと指摘している。なお、これらの説が映画の怪物の設定と一致している点も指摘されている。

オカルト研究室室長の考察

チュパカブラは、一つの生物というより、複数の出来事に同じ名前が付けられた現象とみるのが妥当だろう。1995年の人型の怪物は目撃談と映画の記憶が、テキサスの犬型の死骸は疥癬のコヨーテが、それぞれ説明の中心になる。それでも、家畜を失った農家や、不気味な死骸を目の当たりにした人々の驚きは本物だったはずだ。チュパカブラは、未知の生物が実在するかどうかを問う話であると同時に、名前と噂が怪物の姿を形づくっていく様子を映す鏡でもある。

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