戦艦陸奥

戦艦陸奥の怪 ― 爆沈前夜に現れた白い着物の女

戦争にまつわる怪談を追う今回のシリーズ、これまで沖縄のガマ東京大空襲を取り上げてきたが、今回は一隻の戦艦にまつわる怪異を紹介したい。日本海軍の主力戦艦「陸奥」だ。今なお原因不明とされる謎の大爆発と、その前夜に目撃されたという不気味な女の噂——今回はこの陸奥にまつわる怪異を追ってみたい。

謎の大爆発 ― 柱島泊地で起きた惨事

1943年6月8日正午前後、広島湾の柱島泊地に停泊していた戦艦陸奥は、突如として原因不明の大爆発を起こした。爆発は艦の中央部、三番砲塔から四番砲塔付近にかけて発生し、船体は真っ二つに折れて沈没した。乗員1474人のうち生存者はおよそ353人にとどまり、1000人を超える犠牲者の多くは爆発そのものによる死亡だったとされている。当時、敵潜水艦による攻撃も疑われたが、これは早い段階で否定されている。

犯人はいたのか ― 窃盗事件と査問を控えた乗組員

爆発の原因については、火薬の自然発火説や、係留されていた爆雷が誤って爆発した可能性など、複数の説が検討されたが、いずれも決定的な証拠は得られていない。中でも根強く語られているのが人為的な放火説だ。実は爆沈の直前、艦内では窃盗事件が相次いでおり、容疑者とされた乗組員に対する査問が行われようとしていた。処罰を恐れたこの人物が、証拠隠滅のために爆発を引き起こしたのではないか、というのがこの説の骨子である。1970年に行われた大規模な引き揚げ調査では、爆心地に近い四番砲塔内から、この容疑者のものと推定される遺骨が発見されたとも報じられている。

爆発前夜、第三砲塔に現れた白い着物の女

この爆発をめぐっては、事件以前から語り継がれてきた不気味な噂がある。爆沈前夜の深夜、艦内を見回っていた乗組員たちが、第三砲塔の上に、長い黒髪を振り乱し、全身真っ白な着物をまとった女の姿を目撃したというのだ。女は大きな口を開けて笑っていたと伝えられ、これを目撃した者たちはその後、原因不明の高熱に倒れたとも語られている。艦という閉ざされた空間に、本来いるはずのない女性の姿が現れたというこの話は、翌日の爆発と結びつけられ、今日まで戦艦陸奥にまつわる代表的な怪談として語り継がれている。

1970年の引き揚げ調査で見つかったもの

陸奥の船体は、事件から四半世紀以上を経た1970年から本格的な引き揚げ作業が行われ、船体の大部分が海底から引き上げられた。回収された主砲塔や主錨などは、現在も全国各地の博物館や神社に展示されており、今なおこの艦の最期に思いを馳せる人々の手によって大切に保存されている。

オカルト研究室室長の考察

敵の攻撃ではなく、味方の艦の中で、しかも原因すら特定されないまま1000人以上の命が失われた戦艦陸奥の悲劇は、人の心に強い不気味さを残す出来事だ。前夜に現れたという白い着物の女が何を意味していたのか、今となっては誰にも分からない。ただ、この話が今日まで語り継がれてきたこと自体が、あまりに理不尽な形で命を落とした人々への、消えない鎮魂の思いの表れなのかもしれない。

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。