平成のネット怪談「赤い部屋」―見ると死ぬと噂されたFlashコンテンツ

2000年代前半、インターネット黎明期の子どもたちを震え上がらせたFlashコンテンツがあった。「赤い部屋」と呼ばれるこの作品は、消しても消しても現れるポップアップ広告というモチーフで、多くの人々にトラウマを植え付けたという。今回はこの平成のネット都市伝説について紹介したい。

消せない広告と機械音声

物語は、友人から聞いた「見た人が死ぬ」という噂のポップアップ広告の話から始まる。赤い画面に「あなたは……好きですか?」という無機質な合成音声のメッセージが流れ、閉じても閉じても何度も表示され続ける。そしてやがて文言は「あなたは赤い部屋が好きですか?」へと変化し、最後には犠牲者とおぼしき名前のリストが画面いっぱいにスクロールしていく――という構成だった。当時のブラウザにはポップアップブロック機能が標準搭載されていなかったため、「本当に消せない広告」というこの設定が、妙にリアリティを持って受け止められたのだという。

制作者は「オーとろ」氏

この作品は、個人サイト「THE 冷蔵庫の中身」を運営していたFlashクリエイター「オーとろ」氏が2003年頃に制作したものとされている。当時はまだ動画共有サービスが一般的でなく、Flashアニメーションを個人サイトで公開し、それが2ちゃんねるや学校の噂話を通じて口コミで広まっていく、という独特の文化があった。「赤い部屋」もそうした「面白フラッシュ」文化の中から生まれ、都市伝説として一人歩きしていった作品の一つだ。

平成のネット肝試しとして拡散

「見ると死ぬ」という噂は、実際に視聴した人々の間で語り継がれ、次第に尾ひれがついて広まっていった。学校の友人同士で怖がりながら見せ合う、いわば平成版の肝試しのような存在になっていたとも言われている。後に、オリジナルとは別のクリエイターの手による「完全版」と呼ばれるリメイク作品も制作され、物語性を排してクリックした瞬間に絶叫と恐怖画像が流れる、より直接的な脅かし方をする作品として広まったことも、この都市伝説の知名度をさらに押し上げる一因になったようだ。

「呪いの映像」文化を受け継ぐネット時代の怪談

「見ると死ぬ映像」というモチーフ自体は、ビデオテープを媒介にした呪いを描いた小説・映画『リング』などにも通じる、日本の怪談によく見られる型でもある。「赤い部屋」が特徴的だったのは、この呪いのモチーフを、当時最先端のメディアだったインターネットとFlashアニメーションに置き換えた点だ。テレビや雑誌ではなく、パソコンの画面という個人的な空間に直接入り込んでくる恐怖という新しさが、当時の子どもたちに強い印象を残したのだろう。

映画化もされた人気コンテンツ

「赤い部屋」の知名度の高さは、2006年公開のオムニバスホラー映画『渋谷怪談 THE リアル都市伝説 赤いホームページ』にも表れている。呪われたホームページを見た者の魂が奪われるという設定は、まさにこの都市伝説を下敷きにしたものだった。ネット発の噂話が、映像作品にまで発展するというのは、当時としては珍しい現象だったと言えるだろう。

今はもう見られない「幻の作品」

この作品が公開されていたホームページサービスは既にサービスを終了し、再生に必要だったFlash技術自体も2020年末に提供が終了してしまった。そのため、現在ではエミュレーターなどを介さない限り、当時のまま体験することはできなくなっている。今となっては直接見ることの叶わない、平成インターネット文化の記憶の中だけに残る作品となった。

オカルト研究室室長の考察

「見ると死ぬ」という噂そのものは荒唐無稽でも、当時のブラウザの仕様という現実の弱点を巧みに突いた設定が、この物語にただならぬ説得力を与えていたのだろう。技術が進歩し、当時と同じ恐怖を再現できなくなった今だからこそ、あの頃感じた得体の知れない不安は、かえって色褪せない記憶として残り続けているのかもしれない。

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)